日本人の給料は安い?日本が抱える所得の問題

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世界の先進国の中でも日本の給料は低いと言われている。

給料の低さにはあらゆる要因が考えられるが、そのなか日本の経済を語るにあたって避けられない考え方が「monopsony」という考え方である。

monopsonyの本質に迫りながら、日本人の給料が低いとされている原因について考える。

日本の経済を語る際に避けられない「monopsony」という考え方

「monopsony」という言葉は日本語に訳すと「需要(買い手)独占」を指す。「売り手独占」を指す「monopoly」の対義語である。

転じて前者のmonopsonyは「労働市場において企業(買い手)の交渉力が強く、労働者(売り手)の交渉力が弱いため、企業が労働力を安く買い叩ける状態」を指す言葉としても使われる。

日本には最低賃金が設定されてるが、これは単に労働者に最低限の収入を保障するものではないことが、このmonopsonyから読み取れる。

 

日本では新古典派経済学の理論に固執している人が多く、最低賃金の重要性が浸透しにくいのはここに原因のひとつがあると考えられている。

新古典派経済学において労働市場は、雇用者だけでなく労働者にもさまざまな情報が共有されており、少しでもいい条件があれは労働者側はコストやリスクなく即座に転職できる、いわゆる「完全競争」であるとされ、この完全競争において、雇用者と労働者の間には「使役」といった一方的な関係性は存在せず、対等な関係を築く。

市場の価格は需要と供給によって変動するが、完全競争でこの理論を当てはめると、賃金は需要によって変わり賃金が上がると需要が減少し結果的に雇用が減少する。

 

しかし、現実世界に置き換えて考えると、この理論が当てはまらないことは明確だ。

労働市場で完全競争が成立するのであれば、賃金が上がると労働者が転職することになるが、現実にはそんなことは起こりえない。

 

また、monopsonyは完全競争ではなく、労働者よりも雇用者が強い立場にいるため、雇用者は本来労働者に払うべき給料よりも安い給料で労働者を雇用できることになる。

こういった搾取は、あくまでもmonopsonyによるものであり、労働者の能力や技術が低いことが問題ではない。

最低賃金が上がると雇用は増える

それでもなお、日本では「最低賃金が上がると失業者が増える」と考えている人がいる。

しかし日本のようにmonopsonyの傾向にある労働市場では、最低賃金を引き上げることで失業者は減少するといえる。

 

具体的な数字を用いて解説すると、このことがよくわかる。

 

時給1000円で1000人を雇用している企業があった。

ここではすでに雇用している1000人と同じ仕事をする人を一人雇用することで、1200円分の収益が発生する。

完全競争であれば、雇用者と労働者は対等でなければならないため、時給1200円を払う必要があるが、monopsonyでは、雇用者が労働者よりも交渉力において強い立場にいるため、1000円の時給で雇用が可能だ。

そうなると発生した収益と時給の差額200円は雇用者の利益となる。

 

もし労働市場の状況が変化し、従来時給1000円で雇用していた人を1100円で雇用しなければいけなくなった場合、雇用主はどう行動するだろうか。

おそらく雇用者は新しく労働者を雇わなくなると考えらえる。

というのも、新しく時給1100円で新しく労働者を雇用することで、すでに雇用していた時給1000円で働く労働者の給料も1100円にせざるを得なくなるためだ。

1人あたりの収益が1200円であることを鑑みても、時給を1100円に引き上げても雇用者が得る利益は赤字にはならない。

しかし新しく時給1100円の労働者を雇うことで、それ以外のすでに働いている労働者の上乗せ分、10万1100円(引き上げた給料の100円×すでに雇用している労働者1000人+新しく雇用する労働者1100円)が課せられるため、新しい労働者を雇用することに消極的になる。

 

上記のケースにおいて、市場の変化で時給が変わるのではなく、政府が最低賃金を時給1000円→1100円に上げた場合を考えてみる。

 

この場合は新しい労働者の雇用可否にかかわらず、すでに働いている人の自給を引き上げなければならなくなり、必然的に雇用者は収益を上げざるを得なくなり、新しい労働者を雇用する。

新しい労働者を雇用した場合でも、1200円の収益に対して時給は1100円なので、最低賃金引き上げに伴う利益を補うために雇用者は人を雇わざるを得ない。

 

この一連の流れが、日本のmonopsonyによる搾取の範囲内であれば、最低賃金を引き上げたとしても失業率が上がらないという理論である。

実際にここ数年、最低賃金は上昇し続けているものの、企業の倒産や消費の冷え込みは劣らず、むしろ雇用が増え給料が増えることで、消費が活発になっている。

 

現在最低賃金を全国平均で時給1000円にまで引き上げることが検討されており、政府は新型コロナウィルスの影響や中小企業の経営状況を判断しながら検討が進む。

「先進国」と言われる諸国に比べて低いと言われている日本の最低賃金だが、経済の停滞を防ぎ、失業率を下げるためにも、慎重な最低賃金の調整が求められている。

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