これからの観光のカギを握る新しい旅の形「ワーケーション」とは

Business

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業ではリモートワークの推進が進んでいる。

26日には、西村康稔経済再生担当大臣が会見を開き、「経済界へのお願い」と5つの点に対しての協力を呼び掛けているが、そのうちの1つにリモートワークを70%維持することが含まれていた。

企業の中には、新型コロナウイルス収束後も引き続きリモートワークを推進していくことを発表した企業もある。

パソコンひとつで場所を選ばず仕事ができる環境が整い始めていることを背景に急速に広がりを見せているのが「ワーケーション」だ。

旅行業界では、インバウンドの需要が激減し大きな打撃を受けているものの、新しくワーケーションという旅行形態が広まることに期待が高まっている。

ワーケーションとは

そもそも「ワーケーション」という言葉は、「Work(仕事)」を「Vacation(休暇)」という言葉を組み合わせてアメリカで作られた造語だ。

アメリカでは従来有給休暇の取得率が低いことが問題となっていた。

そこで新しいライフスタイルとしてバケーション中にも旅行先で働き、家族や友人と過ごす時間を増やすためにワーケーションという考え方が広がった。

 

日本でワーケーションという考え方が取り入れられ始めたのは、2018年6月に「働き方改革関連法」が成立したことで、翌2019年4月からの年次有給休暇(年休)を年間5日取得することが義務化されたことを受け、各企業が長期休暇取得へと積極的に動き始めたことがきっかけだ。

 

ワーケーションを取り入れる自治体は、都市部に住みながら地方と交流する「関係人口」の拡大策のひとつとしてこの機会を好機ととらえている。

2019年11月には、90の自治代が参加する「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」が設立され、情報交換の場として連携を深めている。

ワーケーション実施事例

ワーケーション先進地である和歌山県では、2017年から2019年の3年間で104社、910人もの人がワーケーションに訪れている。

クラウドサービス大手のセールスフォース・ドットコムは2015年10月にサテライトオフィスとして白浜町に新たなオフィスを構え、都市部で働く内勤営業社員数人が3か月交代で和歌山で勤務しながら、終業後や休日は県内観光や温泉、サーフィン、ゴルフといったアクティビティを満喫。

セールスフォース・ドットコムでは、地元の小中学校でプログラミングの授業を実施するなど住民との交流も深めており、ワーケーションを通じて社内における会社や地域への貢献意識が高まっているという。

これからの観光のカギを握るワーケーション

ワーケーションを推進してきたところに新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、観光業は逆にこれを契機と捉え、国内旅行の新たな需要喚起策としてワーケーションへの取り組みに本格的に乗り出した。

 

国内でも数多くのリゾートホテルを運営している星野リゾートでは、沖縄県竹富町にある滞在型リゾートホテル「星のや竹富島」にて2021年1月までの期間限定で30連泊の宿泊プランを提供。

価格は1人27万8,460円(税別/サービス料別/2名1室)と、通常の約3割程度の価格て滞在可能だ。

客室内には無料で使用できる公衆無線LAN(Wi-fi)を完備しているほか、滞在期間中は仕事で必要になると考えられるプリンターや延長コードといった備品を貸し出す。

 

また北海道旭川市にあるホテル「OMO7(オモセブン)旭川」でもワーケーション用のプランを打ち出すことが決まっている。

OMO7(オモセブン)旭川では2020年7がつから11月の5か月間限定で15から30連泊のプランを通常の4割以下の価格で提供する予定だ。

 

日本旅行協会(JATA)の副会長である高橋広行JTB会長は、新たな旅行の形としてワーケーションを世の中にどんどん提案したいと話している。

ワーケーション推進の課題

一方でワーケーションの推進には課題も多い。その一つが企業側による労務管理だ。

JTB総合研究所の高橋伸佳主席研究員は、仕事と休暇の線引きが必要だという前提に触れ、交通費や宿泊費といったコストを企業側がどこまで負担するのかという部分を調整する必要があると言及した。

滞在先での事故などに対する労災の危険度も異なる。

 

社員側にも課題は多い。

同研究所の調査では、20代から30代の男性ではワーケーションが認められれば休暇が取れやすいと答えた人が多かったものの、20代から30代の女性においては、仕事とプライベートの旅行を完全に分けたいと答えた人が多かった。

このように社員間で意識に温度差が生まれている。

企業側は、このような温度差や制度面の課題をクリアしなければならず、そういった課題を超えるだけのメリットがなければ導入に踏み切るのが難しいのが現実だ。

 

そこでパソナグループの「パソナ JOB HUB」では、このような企業の課題を解決するために、7月1日から都市部の企業を対象に、ワーケーションを活用した人材育成、事業創造プログラムの提供を開始した。

ワーケーションや人材育成、事業創造といったノウハウを持つコーディネーターが各地方と連携して、地域交流を通した課題解決などの具体的な内容を企画。

日本航空やANAホールディングス、全国の観光団体と協力しながら取り組みを進めている。

 

ワーケーションには社員育成の観点以外にも、各地方にある課題解決を通した新たなビジネス展開のきっかけといったメリットがある。

単に「旅先で仕事をする」といった観光スタイルの一つという側面だけではなく、ワーケーション本来のメリットを享受できるかどうかがワーケーション普及のカギになるのではないだろうか。

コメント

Translate »
タイトルとURLをコピーしました