Appleの第2四半期(4から6月期)の業績が予想よりもよかったことを受け株価が上昇。
7月31日にアメリカ株市場で上場以来最高値を更新し、それまで株価が世界で一位であったサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコを抜き時価総額世界一の企業となった。
Appleの株価上昇
アメリカのAppleが約8か月ぶりに時価総額世界一の企業に返り咲いた。
Appleが時価総額で世界一位になるのは、サウジアラムコが新規株式公開(IPC)を果たす直前の2019年12月10日以来だ。
年初からのAppleとサウジアラムコ各社の時価総額は、Appleでは5,375億ドル増加した一方で、サウジアラムコでは1,195億ドル減少している。
サウジアラムコは実力者であるムハンマド皇太子が企業価値が2兆ドル以上だと主張したことによって、上場直後に時価総額2兆ドルを記録したものの、その後低迷が続いており、足元では1兆7,600億ドル程度にとどまっている。
一方のApple株は31日に終値ベースで前日と比較して10%高と急激に伸びた。
Apple株価上昇の要因
Apple株が上昇した背景にはいくつかの要因が考えられる。
1つ目に新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅での仕事や学習機会が増え、同社の製品の需要が拡大したことだ。実際に2020年第2四半期の売上高と純利益は市場の予想を上回っている。
コロナ禍での株式市場においては、大型ハイテク株への一極集中の流れが大きい。
世界的に経済が低迷し景気の先行きが不透明な中で、投資家が買う株は確実に成長が見込まれる銘柄に集まるのは言うまでもない。
Appleは先に挙げたような自宅での製品需要に加え、次世代通信規格である「5G」に対応した端末の発売が見込まれており、その流れも株価上昇に一役買っている。
Apple以外にも、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムといった企業でも在宅勤務による「クラウド」需要の拡大など、投資家は中長期の成長ストーリーをイメージしやすい。
さらに株式分割も発表されたことで、個人投資家がApple株を買いやすくなるという予測がされたことも株価上昇につながっていると考えられる。
エネルギー株は世界的に敬遠されている
一方でサウジアラムコを含む世界のエネルギー株は世界的に投資家から敬遠されている。
アメリカの調査会社であるファクトセットの調査データをもとに世界上場企業の時価総額を集計すると、エネルギー企業の比率は全体の約6%にとどまった。
ピーク時の2009年には10%を超えていたことを考えると、大幅に減少していることがわかる。
エネルギー株が買われにくいとされる理由の一つが、新型コロナウイルスの影響だ。
感染が拡大し人や物の動きが宣言されたり経済活動が停滞すれば、原油の需要は比例して減少し、価格が上がらず採算が悪化することは容易に予測ができる。実際に一部の石油メジャーでは減損計上を公表している。
さらに環境問題へ配慮した「EGS投資」が拡大していることで、気候変動対応が遅れているエネルギー企業は投資対象から除外される流れもあり、組み入れ額が減らされている。
従来原油国や石油会社は資源の枯渇による「ピークオイル」の到来を恐れていたものの、電気自動車が普及したり、産業構造が大きく転換したことで、ピークオイルの到来は資源の枯渇ではなく、需要が減少することでもたらされる可能性が高くなってきた。
30年以降だとも言われていたピークオイルは実は19年であったとの見方をする専門家もおり、6月にはアメリカシェール産業の老舗、チェサピーク・エナジーが経営破綻に追い込まれている。
そのような中サウジアラムコは圧倒的低い生産コストを武器に優位性を固めようとしている。
6月には石油化学大手サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)を買収。上流から下流を支配する大きな総合化学企業へ変わろうとしていた。
このような背景もあり、サウジはアジアにおける中期的な需要のゆくへに強気の姿勢を保ち、ピークオイルの終盤において市場を支配することを考えている。
このようなエネルギー転換でカギを握るのが各国政府の対応だ。
21年には第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催される予定で、そこで炭素税や排出量取引といった整備が進むと、石油会社に暗雲が立ち込めることとなる。
此度のApple株の急伸は、新型コロナウイルスによる世界経済への影響と、これまで少しづつ進んでいたピークオイルの到来が顕著に表れた結果となった。
コメント