東京大学で「大学債」と呼ばれる債権を発行し、研究費用として200億円を調達することを発表した。国からの交付金だけでなく、自由に使える資金を確保することで、研究活動を強化する考えだ。
大学債は早ければ10月にも発行されることが決まっており、東京大学では大手証券会社との準備を進めている。
日本では初めて導入される大学債
日本では一般的に大学が投資対象になることや、大学が株を運用することなはい。
一方で欧米では寄付金を元でに投資を行って資金を確保したり、大学の研究開発力を売りに大学債を発行して投資家に購入してもらうケースは少なくないという。
実際に世界的に有名なハーバード大学では、個人のみならず法人からも毎年800億円近い寄付金が寄付されており、総額4兆円にものぼる大学基金で設備投資や株の投資運用などで利益を上げて資金を確保している。
イギリスの名門大学であるオックスフォード大学でも100年にわたって運用する超長期的運用の大学債を発行。毛ブリッジ大学では60年の大学債を発行し資金を調達した。
日本における大学基金では慶応大学の基金が有名だが、2018年度末で総額731億円と欧米の有名大学に比べると都の規模は小さいと言わざるをえない。
そもそも日本では基金を元手に大学が投資を行うという習慣がなく、資金調達は国立私立大学ともに課題の一つだ。
中でも国立大学においては私立大学に比べて大学基金が浸透しておらず、国からの助成金や学生が支払う学費に頼っている状況が続いている。
しかしながら研究費や施設費といった費用の先細りを懸念した東京大学では、日本の国立大学として初めて大学債の発行を決めた。
東京大学が大学債を発行する理由
これまで国立大学において投資として認められていたのは、附属病院や学生寮といった、事前に相当の収益が見込めるものに限定されていた。
しかし大学の研究開発を最大限に活用するためにも、こういった縛りをなくすことを目的に、関連する法令改正をし規制緩和を求めている。
実際に研究棟といった施設を増築、拡充するために資金集めができないとなると、優秀な人材の流出を招き大きな損失となりえる。
グローバル社会を生き抜くためには、日本国内で高い水準の研究開発や人材確保を充実させ、さらにそのためにスピーディーに資金調達できるか否かが重要だ。
東京大学はすでに信用格付けにおいてAAAを取得
東京大学の要望が通り、2020年6月には国立大学法人法施行令が一部改正となり、大学債の発行条件が緩和された。このことを受け東京大学では国立大学で初となる大学債発行に向けて動き出している。
大学債はこうに関わる証券会社や銀行の選定を行い、7月31日には日本格付研究所(JCR・中央区銀座)から債務履行の確実性が最も高い信用格付けである「AAA」を取得したことをホームページ上で発表した。
この「AAA」というランクはNTTドコモと同じランクであり、東京大学の期待値の高さがうかがえる。
メディアの報道によると、10月には40年という長期間にわたる200億円規模の大学債発行に向けて準備を進めているという。
大学債発行にともなうメリットとデメリット
大学債の発行には資金調達ができるなどのメリットがある。
実際に東京大学というブランドは投資家にとっても大きな安心材料となり、投資初心者から経験値のある投資家まで幅広い層に受け入れられることは間違いない。
東京大学側も結果に結びつく結果が出そうな研究を優先するとみられている。
一方で冒険ができなくなることも考えられる。
例え東京大学であっても冒険をせずに、安全運転で進まなければならなくなるのは避けられないだけでなく、国立大学が投資の対象になることで、癒着や汚職といった事件が起きる可能性も否めない。
東京大学としては、公正かつトラブルを避けるためにも、より情報公開を徹底していくことが求められる。
日本における大学債
東京大学が大学債を発行し、研究や施設の投資に必要な資金を調達する準備を進めていることを受け、他大学でも大学債の発行へと動く可能性は大きい。
一方で大学の規模や理工学系の実績の有無によって格付けランクが決まるため、格付けランクが低くなるとそのイメージが定着するという危険性もはらんでいる。
大学側としてもそういったイメージダウンを避けるため、国立大学の中でもごく一部の大学のみが検討するのではないかとみられている。
東京大学の大学債の発行を機に、日本の大学の在り方が大きく変わっていく可能性がある。
この一件を受け、東京大学の大学債が投資家にどのような評価を受けるのかのみならず、ほかの大学がどのように動いていくのかにも注目が集まっている。
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