新型コロナウイルスの感染拡大で大量消費の脆弱さがあらわに

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新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したことにより、世界中の経済は大きく打撃を受けている。日本においては「コロナ禍」という言葉も生まれ、その影響は深刻だ。

アメリカでは消費財の購入や飛行機旅行、レジャー活動、自動車といった支出が減少したことが報告されており、こういった現象の影響で、世界ではこれまで大気汚染が問題になっていた場所をはじめとして温室効果ガスの排出量が減少したことも話題となった。

クラーク大学の環境政策・環境サイエンス教授のHalina Brown氏は、「パンデミックによって大量消費に依存しているアメリカ経済の脆弱性が浮き彫りになった」と話している。

アメリカの消費の歴史

コロナ禍における消費の減少は、前述の通り環境に好影響をもたらしている一方で、社会や経済に対するダメージは深刻だ。

アメリカでは景気が減退してことで2020年4月の失業率が世界恐慌以来最悪の14.7%を記録し、それと同時に多くの企業が倒産に追い込まれており、人々の生活はますます苦しくなっている。

 

Brown氏は、「消費社会は20世紀の社会構造だ」とふれ、アメリカ社会に浸透した大量消費の概念により「アメリカン・ドリーム」という単語が生まれ、車や家、家具、電子機器を購入する代名詞的に使われていると話した。

実際にアメリカでは個人消費支出がGDPの7割近くを占めており、個人消費が経済を支えているといっても過言ではない。

そもそもアメリカにおいて消費社会の基礎が誕生したのは第一次世界大戦の後だ。区国業界が誕生し、消費者金融が広まったことが後押しとなって広まった。

1920年代には、マーケティング分野を開拓したエドワード・バーネイズ氏が、製品の有用性よりも高感度や力強さ、セクシーさのような人間の欲求を利用した人々の消費を促し、「消費者」という単語を広めた。

大量消費の時代に

さらに第二次世界大戦後の1940年代後半から1950年代には、現代の大量消費が意図的につくられた。

この時期には戦時の工業生産が終了したため、企業は巨大な生産能力を軍事部門から民間部門へシフトしなければならず、復員軍人の失業問題にも対処することが求められていたことから、当時のハリー・トルーマン大統領は、「人々に向けて消費財を大量に生産する」という解決策を見出した。

 

政府は復員軍人に対するローンを打ち出し、家の購入を助けると同時に政府支出の公共事業で道路やインフラを整備。郊外に住宅を持つことを合理的な選択の一つとして提示した。

また社会保障が充実したことに加え、労働組合による賃上げ運動もあり、人々はより多くの金額を消費に回せるようになった。

 

Brown氏は、「この歴史的な分岐点において、経済繁栄と社会的調和の基盤として消費者支出を増やすという共通の目的に向けて、企業・政府・労働者が一体となった」と言及している。

驚いたことに、この協調のおかげでアメリカの財およびサービスの生産量は1946年から1956年の間に2倍にまで増加。さらに1970年までにさらに倍増した。

多くのアメリカ人が家を持ち、ショッピングモールに集まることで、消費主義が基本的な価値観となるまでに四半世紀しかかからなかったという。

 

さらにリチャード・ニクソンとニキータ・フルシチョフが台所製品を前にして経済システムについて議論した「キッチン討論」からもわかるように、「消費社会」は冷戦下におけるソ連の共産主義システムに対する資本主義システムの優位性の象徴となった。

現代の消費事情

しかしながらBrown氏は、現代における消費社会は再考しなければならないことを主張している。

1950年代から消費社会が拡大したことで「人間にとっての基本的な快適さ」の概念が着実に大きくなっていき、その影響で、今では誰もが最新テクノロジーを備えたデバイスを所持し、多くの家具が揃えられた広い家に住むことを理想としている。

さらに大量に購入し消費するライフスタイルは、二酸化炭素を多く輩出することを意味しており、「収入が世帯における二酸化炭素排出量の予測因子として最良である」という研究の結果も出ている。

こういった関係は政治的見解だけでなく、教育、環境への態度に関係なく、多くの国で共通していることがわかっている。

 

消費社会を維持するために高い環境コストがかかるだけでなく、家庭消費の増加によりGDPが成長するにつれ温室効果ガスの排出量も増加。

これらの状況について、科学者や政策を率いる立場にいる人は「テクノロジーの発展によりエネルギー効率が高くなり、再生可能エネルギーへの移行が実現すれば、将来の温室効果ガス排出量は減少する」としているものの、経済成長と温室効果ガスの排出量は実際に関連している。

これらの背景からBrown氏は新型コロナウイルスの感染拡大により、消費に大きく依存した経済の脆弱性が明らかになったことを主張している。

政府は消費社会に依存した経済を支援する方針を改め、教育や医療、公共交通機関、住宅、公園、インフラ、再生可能エネルギーといった分野の公共支出や投資に重きを置くことがアメリカがより良い国になることにつながるとBrown氏は指摘している。

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