日本の小売業で新たな業態が増加しつつある。
コンビニエンスストアの「ミニストップ」では、11月から企業のオフィスなど全国約1,000ヵ所に、支払いまでの一連の流れを顧客自身で行う小型店舗を出店する。
さらに高級スーパーとしても知られている「紀ノ国屋」も無人店を展開するという。
小売業界の人手不足に拍車をかけるように新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、業界全体で業態の見直しが加速している。
無人店を展開するミニストップ
「ミニストップ」が展開する無人店舗は、商品棚を2~3つほど並べた小規模店舗で、広さはオフィスの一角を利用した3~10平方メートルの広さに設置される。
店員は配置せず、セルフレジを用いて顧客自身が商品のバーコードをスキャン、ICカードなどのキャッシュレス決済で会計を済ませる。
陳列する商品は、飲料や菓子、カップ麺などの賞味期限の長い商品や、雑貨100点程度に絞られる。通常のコンビニにあるようなおにぎりや弁当といった商品は、補充や廃棄の手間がかかるため扱わないという。
出店にかかる費用は数十万円であり、通常のコンビニの出店費用が5,000万円~1億円とされる中、出店のコストを大幅に抑えられる。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、本社に出勤せずにシェアオフィスや郊外にあるサテライトオフィスで働く人が増加している中、仕事の合間や昼休みに気軽に軽食を購入できる窓口として需要が高まることが予測されており、首都圏で1,000店舗体制にまで広げる見込みだ。
ミニストップ以外にも無人化を検討しているコンビニがある。
ローソンでは生態認証とスマートフォンアプリを連携して入退店、決済は事前登録したクレジットカードでレジを通さずに支払いを完了させるシステムを構築しようとしている。2020年2月から期間限定で実証実験も行われていた。
さらに「セブン-イレブン・ジャパン」でも、夜間のみ自動販売機だけで営業する実験店を展開予定だという。
無人店舗の波はコンビニ以外の小売業界にも拡大
無人店舗拡大の流れはほかの小売店にも及んでいる。
紀ノ国屋では、10月に無人決済の新業態をスタートさせた。来店客は欲しい商品を棚から持参し、持ってきたカバンに直接入れる。最終的に精算機でキャッシュレス決済をすることで買い物を完了させるというものだ。
生産額は、人工知能(AI)やカメラ、棚に設置された重量センサーなどを持ち出で、どの顧客がどの商品をカバンに入れたのか判断して決められる。
イオン系列のスーパーである「カスミ」では、茨城県内の企業や官庁のオフィスといった場所に無人店舗の設置を開始している。
飲料や菓子、文具を取り扱う小型店で、スマホアプリを利用して顧客が自ら商品のバーコードを読み取り、事前に登録したクレジット情報を用いて決済する。
小売店各社で続々と無人店舗の出店に乗り出すのは、人手不足に加え新型コロナウイルスの影響で消費行動が変化していることが背景にある。
9月のコンビニ大手7社の既存店における売り上げは、7か月連続で前年の同月比から減少しており、在宅勤務が拡大したり、外出自粛の要請が出されたりと、都心の店舗を中心に売り上げが落ち込んでいる。
スーパーは巣ごもり消費で需要が拡大している店舗もある者の、人手不足や感染防止策などの問題で費用負担が重荷となっている。
無人店は中国発信
そもそも無人店を先行して開始したのは中国だった。
中国では店員がいないコンビニである「ビンゴボックス」が火付け役となり、2017年頃からコンビニを中心に無人の店舗が増加傾向にある。また無人化を後押しする企業も増えてきているという。
スタートアップの雲拿科技(クラウドピック)では、店内設置用のカメラ技術を開発しており、雲拿科技が開発したカメラは、98%以上の制度で顧客が陳列棚から取った商品を判別できる。
2018年にはアメリカでも、アマゾン・ドット・コムが店舗で商品を手に取りそのまま店舗を出ると、自動で事前に登録された方法で決済が完了する「アマゾン・ゴー」を展開しており、世界的に見ても無人店が普及し始めている。
デロイトトーマツグループの藤井剛パートナは、「コロナ禍でも無人店舗を含めた非接触経済は飛躍的に成長する。25年までにアジア太平洋での市場規模は現在の3倍の300兆円超になる」と市場の発展を予測している。
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