新型コロナウイルスの影響による経済不況で7万人以上が失業する中、雇用の受け皿的存在であったウーバーイーツの配達パートナーに逆風が吹いている。配達パートナーの増えすぎにより収入が落ち込んだとの声が続出しているのだ。
参入企業が相次いでいることから、今後はさらに報酬が引き下げられる可能性も考えられる。失業や収入の低下に悩んで飛び込んだ世界であっても、窮地に陥りかねないという危険性が出始めている。
ウーバーイーツの配達パートナーが窮地に
東京の三軒茶屋駅前にあるマクドナルドは、ウーバーからの配達依頼が多く、稼ぎを狙う配達パートナーが行列を為すことから、「ウーバーイーツ配達パートナーの聖地」と呼ばれている。
派遣会社を辞めウーバーイーツの配達パートナーを本業としている男性は、3月ごろから配達パートナーが急増し、10月に「Go To イートキャンペーン」により外食需要が回復してきてから宅配需要が落ちたと話す。さらに仕事の奪い合いで収入が3割減った人もいる。
配達パートナーの人数について、ウーバーイーツ日本法人に問い合わせても回答はなく、配達パートナーらでつくる労働組合である「ウーバーイーツユニオン」の土屋俊明執行委員長によると、東京エリアで1万人といわれたものの、現在は倍数になっているのではと話した。
新宿や池袋を中心にバイクで配達している土屋氏は「8月までは時給にすると1,500円~2,000円ほど稼げたものの、最近は1,500円に達しないという。配達時のガソリン代を考えると東京都の最低賃金である1,013円を下回ると現状を嘆いている。
ウーバーイーツ配達パートナーとは
ウーバーイーツの配達パートナーは、飲食店の出前代行が仕事だ。
顧客が専用アプリで注文し、ウーバーが店舗や配達先に近い場所にいる配達パートナーに依頼を送信。依頼に応じた配達パートナーが店舗から商品を受け取り、自転車やバイクで依頼された届け先まで配達する。
報酬は商品の受け渡しで発生する固定料金に加え、店舗から注文先までの距離に応じた変動料金の合計から、ウーバーへのサービス手数料10%を差し引いた額である。配達パートナーの不足度に応じた追加収入なども支払われる。
配達パートナーの急増を見て、以前のバイク便のようになってしまうのではと指摘する人もいる。
バイク便はバブル期に急拡大したものの、過当競争により配達パートナーの報酬が引き下げられた結果、過去には月に100万円稼ぐ人がいたものの、現在では20万円ほどしか稼げないというのが現状だ。
配達パートナーの中には大学院で修士号を取得した人もいる。私大大学院で科学の修士号を取得した男性は、リーマンショックの影響で就職に苦労し、ようやく恵まれた会社員生活を送り始めたころにコロナ禍に突入。
在宅勤務となったことで労働時間の報告を何度も求められたことから心身を崩して退職し、ウーバーイーツの配達パートナーになったという。
配達パートナーとしての収入は、1回に配達での収入が500円であるため、朝から晩名で約30件の配達をこなし、週6日で月収35万円だという、さらに週2日福祉施設で夜勤のアルバイトもしている。
新規企業の参入も競争激化に拍車をかける
配達業界ではウーバー、出前館の二強に加えて、フードパンダ、ウォルトといった海外企業の新規参入も相次いでいる。
出前館においては、2020年8月期決算で過去最上の売上高を記録したものの、人件費がかさみ最終的には赤字となっていた。
調査会社の「エヌピーディー・ジャパン」の東さやか氏は、「働き手は次々集まる現状では、待遇改善は期待できない」と今後の報酬引き下げもあり得ると、現状に警鐘を鳴らしている。
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