KDDIの子会社であるauペイメントが給与などの支払いに関して、5月からスマートフォン決済「auPAY(auペイ)」を活用して前払いを受けられるサービスを開始すると発表した。
給料日前に電子マネーとして一部を受け取れるようにできる次世代サービスが広がる。
auペイの前払いサービス
auペイメントは東京都港区に本社を置くフィンテックベンチャー企業の株式会社ADVASA(アドバサ)と連携してサービスを提供していく予定で、アドバサでは2019年から給与前払いシステムのアプリケーション連携を実施している。
給料を前払いで受け取るには、従業員が専用サイトを利用してauペイのプリペイド機能に希望金額をチャージ申請し、アドバサが企業に対して手続きを進める。
前払いの金額は、それまでに働いた分に応じて範囲が定められ申請以前の勤務日数などを考慮した勤務状況に基づいて決定する仕組みだ。
労働基準法とスマホ決済
auペイとは、バーコードまたはQRコードで支払いができるスマホ決済サービスで、利用するにはアプリをダウンロードする必要がある。
チャージ方法は現金、クレジットカード、ポイント、au独自のauじぶん銀行など数種類にわたり、コンビニや飲食店など加盟店は190万店以上で、ユーザー数は1億人を突破した。
auペイによる決済では、ポイント還元やクーポン発行といったキャンペーンを随時打ち出し、日ごろの支払いをお得にできると人気になっている。
給与前払いをauペイで受け取れることはメリットが多いが、労働基準法では賃金は現金払いと原則定められており、チャージ後は現金化できないauペイは法律に違反するように思える。
ただし省令改正を目指した議論がキャッシュレス推進のために行われており、さらに現在ほとんどの企業が実施している銀行振り込みも同意に基づく例外とされているので問題ない。
今回の発表では即時現金化できないことへの懸念も伺えるが、企業や政府はキャッシュレスを後押ししたい方針だ。
広がる報酬の前払い制度
幅広い分野で活躍する大手総合会社の伊藤忠商事や楽天グループも給料の前払いサービスを取り入れている。
両社が実施しているのは、新型コロナウイルスの影響により労働条件が厳しくなるなかで人材の確保と流出の防止をするための策として始まり、金融機関口座に振り込む形式で即時入金するサービスだ。
アメリカでは「ペイロールカード」と呼ばれるプリペイドカードに給料を直接振り込むサービスが普及し、10年前と比較すると2倍超えとなるおよそ5兆7000億円が21年に振り込まれるという。
雇用情勢が不安定で給与総額が低下している今、給与前払いの需要は高まっている。
キャッシュレス化の後押しと資金繰りの改善に今回のauペイのサービスはどのように影響していくのか、経営者と労働者の両者にとって興味深い取り組みとなりそうだ。
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